ちいちゃんパパのブログ

日々の、あることないこと。なんて、ほんとはちがう目的だったんですけど。まあ。いろいろ

誕生日のおくりもの

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パパへ

 

おたんじょうび、おめでとう!

5月18日のたんじょうびだね。

なんさいかはしらないけど・・・

ともかくおたんじょうびおめでとう♡

 

***

 

学校で、

 

花束の作り方を教わったらしいちいちゃん。パパの誕生日にとてもりっぱな花束を作ってくれた。

 

「For  You」というティンカーベルのメッセージカードの裏には、ちいちゃんからの優しいメッセージ。

 

ねえ、

ちいちゃん。

 

ぼくは、ちいちゃんのその優しさをちゃんと上手に受け止められている? ぼくはちいちゃんの良いパパで、いられているかな?

 

でもさ、

 

ぼくはちいちゃんのその誕生日のおくりものが、とてもとてもうれしかった。

 

「ねえ、ちいちゃん」と、だからぼくは言った。

 

「ありがとう」

 

それだけじゃ、ほんとはきっととても足りないんだけれど。

思い出し笑い

仕事中、

ふと、思い出し笑いをしてしまった。

 

3年生になったちいちゃん。

まだお風呂はパパと入ってくれる。

 

で、

 

以前はちいちゃんとお風呂に入るのはほぼパパだったのだけれど。

 

けど去年の10月くらいのこと、ちょっと体調の悪い日が続いているなあなんて思っていたところ気がついたらパパは救急車で運ばれていて(こわ)、結局5日ほど入院してしまい、以来パパは体調をあまり信用されず、、、。

 

まあ、

あたりまえですね。

 

ということもあって、ちいちゃんとのお風呂もママとパパ、かわりばんこということになった。

 

それで昨日は、ちいちゃんと一緒にお風呂に入る日であいかわらずちいちゃんはお風呂のなかで空想の翼を広げる。

 

最近のちいちゃんのお気に入りは「七つの大罪」。とくにホークという不思議なしゃべるブタさん。あと、ディアンヌという巨人族のかわいい女の子。

 

って、

 

観たことのないひとには想像できないおはなしだろうけど。

 

「俺さまは残飯処理団、団長だ!」

 

こんなようなセリフをかわいい声で真似たりする。でももちろんお風呂のなかで繰り広げられるのは単純なお話ではないわけで。

 

昨日は七つの大罪を中心とした、ちいちゃんとパパお気に入りのアニメのキャラクターたちが繰り広げる天下一武闘会。ちょっと前にケーブルテレビでドラゴンボールがずっとやっていて、以来天下一武闘会はちいちゃんお気に入りのストーリー。

 

で、

 

昨日、登場したのは七つの大罪、アドベンチャータイム、団地ともおスパイダーマンスポンジボブ魔法使いプリキュアの面々。

 

「おい」と、パパが演じる悟空が言います。「オラ、びっくりしたぞ。なんで天下一武闘会なのに、オラたちが出ないんだよ。おっかしいだろ」

 

「それでは」と、悟空を無視して司会者のちいちゃん。「これより天下一武闘会を始めます」

 

「おい」と、悟空。「ちょっと待てよ」

 

「一回戦は」と、ちいちゃん。「七つの大罪チーム、ブーブー(ぼくは勝手にホークのことをブーブーと呼んでいる)VSアドベンチャータイムチーム、ジェイク」

 

「えー」と、悟空。そして試合開始。

 

ブーブーはちいちゃんが演じて、ジェイクをぼくが演じる。「俺さまは残飯処理団、団長ホークさまだ。へんてこな黄色い犬なんかには負けないぞ」

 

「なんだとー。俺さまだっておまえみたいなへんてこなブタには負けないぞ」

 

で、

 

そんな言い争いが続いて試合が始まらないので、審判のパパが「そこまで。いつまでも試合が始まらないので、両者失格」

 

なんてことを言ったものだから、ちいちゃんは怒ってしまって。

 

「ずるいよ、パパ」と、ちいちゃん。「パパが試合開始って言わないからいけないんだよ」

 

湯船のなかで、ちいちゃんは頬を膨らませて猛抗議。そのムキになった表情があまりにかわいかったから、なんて言ったらちいちゃんはきっともっと怒ったかもしれないけれど、そんな表情を不意に思い出して、仕事中なのに、ぼくは思い出し笑いをしてしまったのだ。

 

なんか、

 

あいかわらずへんてこな毎日だ。

 

へんてこで幸せで、愛しい毎日。こんな日がどうか、ずっと続きますように。

デート

「今度の土曜日、デートなんだ」と、ちょっと誇らしげに会社の事務員さんにぼくが言うと、事務員さんはやれやれといった感じでちいちゃんとですか、と答えた。事務員さんは会社の納涼祭にも来たことのあるちいちゃんのことをよく知っている。

 

「それがね」と、さらにぼくは言った。「違うんだな、14歳の女の子」

 

そこで事務員さんもちょっとだけ驚いた表情をした。ほぼちいちゃんのお話ししかしないぼくだからびっくりしてもらわないとぼくだって面白くない。

 

「まあ」と、ぼくは続けた。「めいっこだけどね。めいっこの14歳の誕生日で、プレゼントを一緒に選ぼうってことになって」

 

やっぱりね、という感じでぼくを見た事務員さんも続けた。「けど、係長。大丈夫ですか? 14歳の女の子と話が合うんですか」

 

「大丈夫だよ」かなり心配してくれている事務員さんにぼくは言った。「ちいちゃんも嫁も、ばあばも来るしね。ていうか、ばあばがちいちゃんを誘ってくれたんだけれどね」

 

それで事務員さんはやれやれといった感じで今度はため息を吐いた。「係長て、デートの意味ちゃんと分かってます?」

 

そりゃ、

 

分かってるよ。それはぼくなりの冗談なんだけど、ぼくの冗談っていつもなかなか通じない。

 

***

 

で、

 

デート。

 

待ち合わせ場所に、ばあばと一緒に来たきょうちゃんが手を振った。今年のお正月はタイミングが合わなくて会えなかったから、2年ぶりくらいに会ったきょうちゃんはとても大きくなっていてびっくりした。きょうちゃんはきょうちゃんで、ちいちゃんおっきくなったねえと笑った。ちいちゃんはちょっと照れながら、なんだかもごもごとありがとうと答えた。

 

「きょうちゃんこそ」と、ぼくは言った。「おっきくなって、もうきょうちゃんじゃなくて、きょうこさんだね」

 

「ぜんぜん、きょうちゃんでいいですよ」と、照れながら答えるきょうちゃんを見て、数年前のきょうちゃんとちいちゃんの後ろ姿を思い出した。

 

まだ幼稚園の年中くらいだったちいちゃんが手をつなごうって言ってつながったふたりの後ろ姿を、ぼくはいまでもよく覚えている。お正月のよく晴れた空と張りつめた冷たい光のなかを歩いた川べりの道。あのとき、このつながりをたいせつにしなくちゃいけないなって思ったのに、ぼくはその機会をほとんど作ってあげられなかった。

 

それでもふたりは笑っている。どこにいこうか、もう目的のお店にいってしまっていいの? それじゃあ、そうしよう。そんな会話のあと、さっそく手をつないで歩き出した。

 

きょうちゃんが選んだ目的のお店はWEGOという、おおよそぼくのようなひとには縁が無さそうな中高生にぴったりな感じの洋服がいっぱいのお店。

 

なにがびっくりかというと店員さんのスカートが短すぎて、うーん、これでいいんだろうかって思ってしまった自分。もちろんそんなこと口にはしなかったけれど、いつかちいちゃんがこんなスカートを着るようになったらと思うとちょっと複雑な心境になってしまった。けどまあ、きょうちゃんは短いスカートじゃなかったし。きっと大丈夫。何が大丈夫かよく分からないけど、というかそんなことまで口出ししちゃいけないですね。

 

「パパもやっぱり中高生のころはこんなお店に来たの」そんなことを考えていたぼくに、ばあばはそんなことを聞いたので、いやーとぼくは笑いながら答えた。「ほら、ぼくはこんなだから、そのころからあんまり洋服とか興味なくて」

 

「そうなの」と、ばあばは言った。「やっぱり男の子ってそうなのね。うちのおにいちゃんもあんまり興味がなかったから」

 

でももったいないねと、ばあばは続けた。「パパはかっこいいのに」

 

「んー」と、ぼくは苦笑しながら答えた。「ぼくのことをかっこいいって言ってくれるのは、ちいちゃんとばあばだけですよ」

 

「えー」と、そんな会話を聞いたきょうちゃんがそこで会話に加わってくれた。「わたしもちいちゃんパパ、かっこいいに一票」

 

「うわ」と、ぼくは言った。「なんと、かっこいいって言ってくれるひとがひとり増えてしまった」

 

で、

 

みんなで妻を見ると、妻はそっぽを向いてしまった。ナイスな反応。けど、ぼくはそれが本音だって知ってるぞ。けどみんな、なんか気を使ってもらってありがとう。みんなやさしいね。

 

毎年、きょうちゃんは誕生日にばあばとこんなふうに洋服を選んでプレゼントしてもらっているそうなんだけれど、ぼくたち夫婦はこれまではプレゼントをおにいさんを通して渡してもらっていた。

 

けど、去年。

 

そんなふうにばあばとふたりでプレゼントを選んでいることを知ったちいちゃんが、わたしも行きたいと言って泣き出したらしくて、だから今年はばあばがちいちゃんも誘ってくれて、それならぼくたちも一緒に行ってプレゼントを選んでもらっていいかどうかきょうちゃんに聞くと、きょうちゃんは快くオーケーしてくれた。

 

ばあばからきょうちゃんは洋服を選ぶのにものすごく時間がかかると聞いていたからちょっと覚悟して行ったのだけれど、気を使わせてしまったのかそんなこともなくごく短時間できょうちゃんは洋服を選んだ。

 

「ちいちゃんにね」と、きょうちゃんは言ってくれた。「今日は選んで欲しいんだよね」

 

もちろんちいちゃんはまだ小学2年生だから、中学2年生の女の子の服を選ぶのは難しいので大まかなイメージを伝えてから選んでもらったみたいだけれど、そんなふうに言ってくれるのはとてもうれしいことで、きょうちゃんはとっても素敵な成長をしているなあって思った。

 

ちいちゃんはちいちゃんで、きょうちゃんに会えることが決まってから「きょうちゃんの洋服をデザインしてあげるの」と言って、一生懸命に絵を描いていた。

 

数年前、まだ小さすぎてあまり成り立っていなかった会話も、いつのまにかずいぶんといい話し相手になっている。きょうちゃんもちいちゃんもひとりっ子だから、いつかふたりが悩みを語り合えるようなそんなふたりになれたならいいなと、そんなことをふたりを見ながら思った。

 

「ちいちゃんパパには、これをお願いします」

 

そう言ってきょうちゃんが選んだのは控えめな銀色のウエストポーチみたいなバッグだった。ばあばからはシンプルな黒いジャケットをプレゼントしてもらうことにしたみたいで、ぼくたちからはそのバッグということになった。どうやらきょうちゃんはけっこうシンプルなものが好みみたいだ。

 

「それじゃさ」と、ぼくはきょうちゃんに言った。きょうちゃんたちが選んでいるあいだにぼくもちょっと見てまわってきょうちゃんとちいちゃんにおそろいで買ってあげたいものを見つけていた。「このなかからさ、きょうちゃんとちいちゃんでおそろいのものを選んでくれないかな」

 

レジの近くによく置いてあるような安価なメッキもののネックレスで、ちいちゃんはきょうちゃんとおそろいのものを持っていたら喜ぶんじゃないかと思ってお願いした。きょうちゃんには物足りないものかもしれないけど、でもきょうちゃんは嫌な顔もせず選んでくれた。

 

ちいちゃんが好きそうな星形のネックレス。色違いで選んでくれた。銀色がきょーちゃんで、金色がちいちゃん。

 

それからは、食事をして(ばあばにごちそうしてもらってしまった)、少しゲームセンターに行ってクレーンゲームをして、別れ際にちいちゃんはきょうちゃんのために描いた絵を渡していた。

 

「ありがとう」と、きょうちゃんが言った。

 

「うまく描けなくてごめんね」と、ちいちゃんが言った。するときょうちゃんはちいちゃんをぎゅっと抱きしめて、大丈夫だよって言った。

 

次に、

 

ふたりが会えるとしたら来年のお正月だろうか。できるなら来年はうまくタイミングを合わせてきょうちゃんとちいちゃんが会えるようにしてあげられたならいいなと思う。

 

またふたりが、川べりの道を手をつないで歩く後ろ姿を見られたならいいなってそんなことを思った。

 

 

 

スティッチ

午前4時。

 

ここのところ4時半には起きて、朝の仕度をする。いつからか妻がときどき腕が痺れるというようになって、以来なるべく負担を減らすように洗濯物も干してから会社に行くようにしているから自然ちょっと早く起きるようになった。

 

病院に通っても妻の症状の原因は結局分からなくて、いまは頻繁に症状が出ているわけではないけれど、それが習慣になってしばらく経つ。

 

といってもちろん外に出して干しておくことはできないから、室内用の物干しに洗濯物を干しておいてあとは外に出すだけという状態にしておく。雨の日は除湿機をかけておく。

 

だからいつもより少し早く起きた今日は朝の支度を始めるまでまだ少し時間があって、なんとはなしに文章を書いている。そんな気分になったのは多分今日がちいちゃんの運動会だからだ。

 

運動会はほんとは先週の土曜日に行われるはずだったけれど、台風の影響で延期になって今日になった。土曜日ならパパでも観に行けた運動会も、平日となるとなかなかそうもいかない。そうもいかないこともないのかもしれないけれど、月初めに仕事を抜けるというのはそれなりに大変だったりもするわけで。結局ぼくは休みも外出も、届けは出さなかった。

 

「えー、嫌だよ」と、昨日一緒に入ったお風呂で運動会には行けないことを伝えると、ちいちゃんはそう言ってくれた。

 

「淋しいよ」

 

もう、

 

それだけでぼくは十分。もちろん、運動会でがんばるちいちゃんの姿を見ることができないことは淋しいけれど、でもちいちゃんも淋しいって言ってくれたから。

 

「ごめんね、ちいちゃん」と、ぼくは言った。「パパもさ、行けなくてすごく淋しいよ」

 

きっと、もっとしっかりしたパパならちゃんと時間を作って、平日だって運動会を観に行けるのだろう。でもぼくは仕事の量だけじゃなくからみついたいろいろなしがらみを断ち切れずに、ちいちゃんにごめんねと言うことしかできない。

 

「それじゃさ」と、ちいちゃんが言った。「明日、パパが帰ってきたらスティッチを踊るよ」

 

今年、ちいちゃんたちはみんなでスティッチの曲に合わせてダンスを踊る。もうずいぶんと前からちいちゃんは歌いながらダンスの練習をしていて、ぼくはそのキュートなダンスを観ることをとてもとても楽しみにしていた。

 

「前から思ってたけど」と、ぼくは言った。「ちいちゃんてさ、すごくやさしいよね」

 

「なにそれ」と、ちいちゃんは言った。「親バカ?」

 

「ちがうよ」と、ぼくは言った。「すごくさ、パパは幸せだなあって思ったってこと。それだけ」

 

あと1時間もすれば外も明るくなりだすだろうか。天気予報によれば今日は運動会日和らしい。ぼくは銀行に行かなければいけないから、外回りのあいだちょっと空を見上げて想像してみよう。

 

きっと想像のなかで一生懸命なちいちゃんの姿が見えるはずで、だからちょっと離れた場所からだけれど、ぼくも一生懸命応援しようかと思う。

 

「がんばれ」

 

って、心のなかで呟いてみよう。ちいちゃんの、素敵な思い出になるように空にそっとお願いしてみようと思う。

 

 

 

スピッツ

大分、涼しくなってきたので、ここのところちいちゃんは自転車の練習に励んでいる。といっても最近ぼくが休日も出勤になることが多いので週に1回、それほど長くもない短い時間だけど。

 

補助輪を取ったのが去年の年末頃で、それからちょっとずつ練習はしていたのだけれど、パパの教え方が上手くないのか、ちいちゃんの苦手意識が強すぎるのか、なかなか上達しないでいた。

 

けどここのところなんだかとてもいい調子で、もちろんぼくが自転車を支えたままだけれどちいちゃんの漕ぐ自転車がずいぶんと安定してきた。右足で蹴りはじめて左足をペダルに載せる動作もスムーズになってきて、苦手だった漕ぎ出しもマスターしつつあるみたい。

 

漕いでるあいだ、このまま手離しちゃっても大丈夫なんじゃないかななんて思ったりもするんだけれど、そんなぼくの気持ちが伝わるのか、前を向いたまま漕ぎ続けながら、「パパ、絶対離しちゃダメだからね」と、ちいちゃんは言った。

 

でもさ、

ちいちゃん。

 

きみはもう大丈夫。苦手だった自転車もじきにできるようになって、それはなんだかぼくにはまぶしいくらいに素敵なことだなって思う。

 

***

 

ごっこ遊びをしているときのちいちゃんは、ぐるぐるいろんな表情を見せてくれて面白い。歌を歌い出したり、踊り出したり。最近、特にすごいなあと思っているのは、キャラクターの声で、ちょっとした声優さんばりにいろいろなキャラクターを演じ分ける。

 

「ちいちゃんてさ」と、ぼくは言ってみたことがある。「声優さんとかになったらいいかもね。なかなかそんなにいろいろな声、出せないよ」

 

「そうかな」と、ちいちゃんは言った。「でもさ、パパもなかなかのものだと思うよ」

 

「ん」

 

プリキュアもそうだし」と、ちいちゃんは続けた。「仮面ライダー、パトレンジャー、スレイヤーズ、アドベンチャータイム、ミッキー、人形遊びのときさ、なんでもやってくれるもんね。わたしがね、好きなのはね、怒ったドナルドと、あとかっこつけすぎなピッツァ・スティーブかな。あんまり似てないけど」

 

あんまり似てないけど、と言われるとあんまりうれしくないけれど、というかぼくはどれだけごっこ遊びに付き合ってるんだろう。でも多分ちいちゃんは褒め言葉として言っているから、素直にありがとう、とぼくは言った。

 

「でもね」と、ぼくは続けた。「そういうのとちょっと違うんだ。パパはちいちゃんが喜びそうな話し方は分かってるからさ。ちいちゃんに面白いって思ってもらえるような話し方はできるんだけど、みんなが面白いって思ってくれるわけじゃない。けど、ちいちゃんのはさ。それとは違ってね。なんか素敵なんだよね、似ているっていうんじゃなくてオリジナルでそんな声のキャラクターでもいいんじゃないかって思わされちゃうんだ」

 

ぼくは小学2年生の女の子相手になんて理屈っぽい話をしているんだろう。でもちいちゃんはおおまか分かってくれたみたいで、ありがとうと言った。

 

「でも、わたしの夢はデザイナーなんだけどね」と、ちいちゃんは言った。「素敵なドレスとか好きだし」

 

「そうだよね」と、ぼくは言った。「知ってる。ひとりの時、よくノートにドレスの絵を描いてるもんね」

 

「あんまりうまくないけど」

 

「そんなことないと思うよ」と、ぼくは言った。「すごく上手に描けてる」

 

「親バカだなあ」と、ちいちゃんは笑った。そしてぼくを見て言った。「パパはさ、夢はなんなの」

 

「ん」

 

なんだかそんなことを聞かれるとちょっと戸惑ってしまう。いまこの歳になって夢っていったいなんなんだろう。家族を幸せにしたいし、まあ、仕事もがんばりたい。誰かの役に立ちたいし、助けてあげたいとも思う。でもそれって夢とは言わないと思うし。

 

「なんだろうなあ」と、ぼくはしばらく考えて呟いた。するとちいちゃんはなんだかいたずらっぽく笑いながらパパはさ、あれだよねと言った。

 

「パパはさ、あれだよね。スピッツ

 

スピッツ?」

 

「そうスピッツになるのが夢でしょ」

 

ぼくは思わず笑ってしまった。「それってスピッツの一員になるってこと?」

 

「うん」

 

ぼくはなんだか、多分ほんとうに久しぶりに大きな声で笑ってしまった。「いや、それほんと叶ったらうれしいかも」

 

「でしょ」と、ちいちゃん。

 

「けどさ」と、ぼくは続けた。「パパってさ、音痴だし、楽器もできないよ。それでスピッツになれるかな」

 

「大丈夫だよ」と、ちいちゃんは言った。「エレクトーンはわたしが教えてあげられるし、そうだ。ピアノはママが教えてあげられるよ」

 

「うわ」と、ぼくは言った。「それはとてもうれしいけど、果てしなく遠い道のりだね」

 

「大丈夫だよ」と、ちいちゃんは自信満々に言った。「信じていればできないことはないって、いつもパパ言ってるし」

 

まあ、

 

たしかにね。

 

***

 

それはただの笑い話だけれど、そんなことがあってから少しぼくも考えるようになった。ぼくはもう40過ぎのおじさんだし、誰かに誇れる特技もないけれど、でもぼくだってもっと真摯に何かを追い求めるべきなのかもしれない。

 

醒めない。

 

ぼくにはいままでそういう出会いがなかったと思ってきた。でもほんとはぼくが追い求めなかっただけなのかもしれない。

 

どちらにしても手の届かないものかもしれないけれど、でもだからって別に諦めることなんてなかったのだ。40過ぎのおじさんもまだ、できないことができるようになることだってあるかもしれない。

 

ぼくが、また小説を読むようになったのはそんなことがあってからで、いつかまた機会があったらちいちゃんに言ってみようと思っている。

 

パパの夢はね、小説家になることなんだ。

 

 

キラキラ

ここのところずっと、小説を読んでいる。

 

といっても、普段の生活は変わることもないからそれまでスマートフォンを見て過ごしていた早朝のひとときや会社での昼休みを読書の時間にしたというだけなのだけれど。

 

だからそんなにたくさんの本を読んだというわけでもなくて、ただそれでもここ数ヶ月で数冊の本を読むことができた。

 

それで何かが変わるというわけではもちろんないけれど、ちょっとした心境の変化はあったりもする。代わり映えのしない時間を過ごしているとそんなつもりはなくても心は硬くこわばって感じることを止めてしまう。気付かずにいればそれはそれで何事もなく流れてしまうものだけど。

 

その本はとても素敵な本だった。といってもまだ半分くらいしか読み終えていないから、おそらく。

 

多分、そのひとの最初の小説を僕はずいぶんと昔に読んだことがある。僕の大好きな人が帯にコメントを書いていて、それに興味を惹かれて手に取ったのだ。でもその小説を僕は余り覚えていない。確か一日に一組だけお客を迎える食堂の話。

 

だからその後、僕がそのひとの本を読むことはなかったのだけれど、なんとなく静かで背筋のピンと伸びるような小説が読みたいと思っていたところに、その文庫本のやさしげなそれでいてどこか凛とした装丁を見つけて自然と手が伸びた。

 

それがそのひとの小説だというのは、後で気が付いた。

 

キラキラ

 

それはバーバラ婦人が教えてくれた秘密のおまじない。「心の中で、キラキラ、って言うの。目を閉じて、キラキラ、キラキラ、ってそれだけでいいの。そうするとね、心の暗闇にどんどん星が増えて、きれいな星空が広がるの」

 

読み終えてしまうのが淋しいなんて思うのは久しぶりで、でももちろん早く先が読みたい。NHKでドラマ化されていたということも後で知ったことだけれど、どこか世捨て人めいた生活を送っている僕はもちろん結末を知らないからいま読書の幸せを楽しんでいる。

 

目を閉じて、キラキラと呟いてみる。キラキラ、キラキラ、呟くたび暗闇に星空が広がって不思議と心の中の不安が消えていく。

 

そうか、

 

けっこう不安だったんだな。といってそれは別に特別なことではなくてきっとみんな多かれ少なかれ不安を抱えている。

 

別に小説を読んでいなくとも、それはいずれ気付くことだったかもしれないけれど、そんな小さな変化で心が軽くなることも確かにあるのだとそんなことをちょっと思った。

 

 

サンリオ

先週末、帰りがけにドラッグストアに寄るとサンリオピューロランドの割引券があるのに気がついた

 

ん、

 

これはダメな思いつきだぞ、と思いつつ一枚もらってきてしまった。

 

今週末は社員旅行でぼくは土日と不在。それでなくともここのところ土日どちらかは仕事ということが多くて先週末は久しぶりに土日ともお休みの貴重な週末だった。だからちいちゃんをどこかちょっとしたところに連れて行ってあげたいなあと思っていたのだけれど、これがなかなか思いつかない。

 

そんなとこだったのでドラッグストアでサンリオの割引券を見つけて、「そうだ、サンリオピューロランドに行こう」とぼくは思ったのだった。

 

ほんとうはもっとなんか夏らしいところで、夏らしい経験をさせてあげたいと思うのだけれどいかんせん、ぼくがもともとその方面が不得手なうえに、ちいちゃんもどちらかといえばアウトドアが苦手な女の子。

 

「まあ、こんなに暑い夏は室内で遊べるとこがいいよね」と自分で自分に言い訳をして家路に着いた。

 

で、

 

「明日はさ」と、ぼくは帰ってすぐに言った。「サンリオピューロランドに行こうか」

 

「ほんと!」と、ちいちゃんは目を輝かせた。思っていた以上にうれしそうに。

 

あー、

 

と、ぼくは思った。安易な思いつきなんだ、ちいちゃん。ぜんぜんたいしたこと思い浮かばなくて次善の策だったのさ。それでもきみがそんなによろこんでくれるなら。

 

「明日は楽しい一日にしようね」と、ぼくは言った。

 

***

 

夕食の後で食器を洗っていると、

 

「ねえ、パパ」と、ちいちゃんは言った。「あそぼ!」

 

「んー、明日はちょっと早いしさ」と、ぼくは言った。「先に洗い物させて。で、ママがお風呂出たらすぐ入って寝なきゃ」

 

「えー」と、ちいちゃん。「昨日もそんなこと言って遊んでくれなかったよ」

 

まあ、確かにここのところ帰りも遅かったからそんな日が多かったかもしれない。明日は休みだし、おでかけと言ってもサンリオピューロランドはそれほど遠いわけでもないし、だから今日は洗い物は後回しにしてちいちゃんが寝てからすることにしようと思って、オーケーとぼくは言った。

 

「それじゃママがお風呂から出るまで遊ぼう」

 

「うん」と、ちいちゃんうれしそうに言った。「それじゃお布団の部屋で待ち合わせね」

 

「はい」と、ぼくは言った。

 

最近のちいちゃんのお気に入りは、プリキュアポケモン。それからケーブルテレビでやっているスレイヤーズというアニメ(けっこう昔のアニメらしい)。それと七つの大罪七つの大罪もケーブルテレビでやってるアニメ。

 

で、

 

これらのアニメがいろいろ絡み合ってうちにあるたくさんのプリキュアポケモンの人形で始まるのがごっこ遊び。たとえばプリキュアの人形たちになったぼくが言う。

 

「きょうは何の劇をやる?」

 

「きょうはスレイヤーズ

 

「それじゃ配役を決めなくちゃ」

 

「ちょっとなんであなたが仕切ってるの。まずはリーダーを決めなくちゃ」

 

みたよな感じで人形を使って劇をするみたいに、ちいちゃんとパパで物語を作っていったりするのだけれど、その日ちいちゃんはプリキュアの気分。というのもパパがクレジットカードで貯まったポイントを使ってプリキュアの新しいキャラクターの人形をふたつ頼んでいてそれが数日前に届いていたから。

 

キュアアムールとキュアマシェリ。最近、登場した新しいキャラクター。ん、どっちがどっちか判然としないけど、きょうはこのふたりが主役の物語。

 

「ねえ」と、ぼくは言った。「こっちの小っちゃい子って頭おっきいよね。一番年下なのにね」

 

プリコーデドールという人形なんだけど、これ髪の毛や服が取外しできて、普通の中学生の姿になったり、プリキュアに変身できたりするなかなか優れものの人形。

 

で、

 

この新しいふたりの人形はなんだか髪の毛がほかのキャラクターの髪の毛より分厚い感じがぼくにはして、なので頭おっきいねという表現になったのだけれど、

 

「あー」と、ちいちゃんは言った。「パパ、いまひどいこと言ったよ。女の子にそんなこと言ったらダメなんだよ」

 

「いやいや」と、ぼく。「そんなつもりはないって。ほら、これ人形だしさ」

 

たじたじのぼくは話題を変えようと思って、「こっちの小っちゃい子っていくつくらいかな。ちいちゃんと同じくらいの小学生かな」

 

「ん」と、ちいちゃん。「わたしも知らないよ。まあ、わたしは2年生だけどね」

 

いや、

 

なんかぼくは笑ってしまった。

 

ねえ、ちいちゃん。さすがにぼくもちいちゃんのパパですから、ちいちゃんの年齢と学年はさ、知ってるんだ。