サンリオ
先週末、帰りがけにドラッグストアに寄るとサンリオピューロランドの割引券があるのに気がついた。
ん、
これはダメな思いつきだぞ、と思いつつ一枚もらってきてしまった。
今週末は社員旅行でぼくは土日と不在。それでなくともここのところ土日どちらかは仕事ということが多くて先週末は久しぶりに土日ともお休みの貴重な週末だった。だからちいちゃんをどこかちょっとしたところに連れて行ってあげたいなあと思っていたのだけれど、これがなかなか思いつかない。
そんなとこだったのでドラッグストアでサンリオの割引券を見つけて、「そうだ、サンリオピューロランドに行こう」とぼくは思ったのだった。
ほんとうはもっとなんか夏らしいところで、夏らしい経験をさせてあげたいと思うのだけれどいかんせん、ぼくがもともとその方面が不得手なうえに、ちいちゃんもどちらかといえばアウトドアが苦手な女の子。
「まあ、こんなに暑い夏は室内で遊べるとこがいいよね」と自分で自分に言い訳をして家路に着いた。
で、
「明日はさ」と、ぼくは帰ってすぐに言った。「サンリオピューロランドに行こうか」
「ほんと!」と、ちいちゃんは目を輝かせた。思っていた以上にうれしそうに。
あー、
と、ぼくは思った。安易な思いつきなんだ、ちいちゃん。ぜんぜんたいしたこと思い浮かばなくて次善の策だったのさ。それでもきみがそんなによろこんでくれるなら。
「明日は楽しい一日にしようね」と、ぼくは言った。
***
夕食の後で食器を洗っていると、
「ねえ、パパ」と、ちいちゃんは言った。「あそぼ!」
「んー、明日はちょっと早いしさ」と、ぼくは言った。「先に洗い物させて。で、ママがお風呂出たらすぐ入って寝なきゃ」
「えー」と、ちいちゃん。「昨日もそんなこと言って遊んでくれなかったよ」
まあ、確かにここのところ帰りも遅かったからそんな日が多かったかもしれない。明日は休みだし、おでかけと言ってもサンリオピューロランドはそれほど遠いわけでもないし、だから今日は洗い物は後回しにしてちいちゃんが寝てからすることにしようと思って、オーケーとぼくは言った。
「それじゃママがお風呂から出るまで遊ぼう」
「うん」と、ちいちゃんうれしそうに言った。「それじゃお布団の部屋で待ち合わせね」
「はい」と、ぼくは言った。
最近のちいちゃんのお気に入りは、プリキュアとポケモン。それからケーブルテレビでやっているスレイヤーズというアニメ(けっこう昔のアニメらしい)。それと七つの大罪。七つの大罪もケーブルテレビでやってるアニメ。
で、
これらのアニメがいろいろ絡み合ってうちにあるたくさんのプリキュアやポケモンの人形で始まるのがごっこ遊び。たとえばプリキュアの人形たちになったぼくが言う。
「きょうは何の劇をやる?」
「きょうはスレイヤーズ」
「それじゃ配役を決めなくちゃ」
「ちょっとなんであなたが仕切ってるの。まずはリーダーを決めなくちゃ」
みたよな感じで人形を使って劇をするみたいに、ちいちゃんとパパで物語を作っていったりするのだけれど、その日ちいちゃんはプリキュアの気分。というのもパパがクレジットカードで貯まったポイントを使ってプリキュアの新しいキャラクターの人形をふたつ頼んでいてそれが数日前に届いていたから。
キュアアムールとキュアマシェリ。最近、登場した新しいキャラクター。ん、どっちがどっちか判然としないけど、きょうはこのふたりが主役の物語。
「ねえ」と、ぼくは言った。「こっちの小っちゃい子って頭おっきいよね。一番年下なのにね」
プリコーデドールという人形なんだけど、これ髪の毛や服が取外しできて、普通の中学生の姿になったり、プリキュアに変身できたりするなかなか優れものの人形。
で、
この新しいふたりの人形はなんだか髪の毛がほかのキャラクターの髪の毛より分厚い感じがぼくにはして、なので頭おっきいねという表現になったのだけれど、
「あー」と、ちいちゃんは言った。「パパ、いまひどいこと言ったよ。女の子にそんなこと言ったらダメなんだよ」
「いやいや」と、ぼく。「そんなつもりはないって。ほら、これ人形だしさ」
たじたじのぼくは話題を変えようと思って、「こっちの小っちゃい子っていくつくらいかな。ちいちゃんと同じくらいの小学生かな」
「ん」と、ちいちゃん。「わたしも知らないよ。まあ、わたしは2年生だけどね」
いや、
なんかぼくは笑ってしまった。
ねえ、ちいちゃん。さすがにぼくもちいちゃんのパパですから、ちいちゃんの年齢と学年はさ、知ってるんだ。