ちいちゃんパパのブログ

日々の、あることないこと。なんて、ほんとはちがう目的だったんですけど。まあ。いろいろ

そんなことを言われたらぼくは

昨日、仕事から帰るとちいちゃんは駆け寄ってきて言った。

 

「見て、パパ。わたしね、歯っかけになったの」

 

もうすぐ7歳のちいちゃん。下の前歯2本はすでに生え変わっているけれど、ぼくから見てその右側の1本がちょっと前からなんだかぐらぐら。

 

先週の日曜日に気になると言うので、ぼくはガーゼでつまんで抜いてしまおうと試みたのだけれど、まだ根本はけっこうしっかりしていて抜けない。なので、もう1週間様子を見てみようね、ということにしていたら、昨日、大好きなベーグルを食べているときに抜けちゃったらしい。

 

「びっくりしちゃったよ」と、ちいちゃんは言った。「なんかね、変だなーと思ったんだけど。口のなかにかたいのがあって、それが歯だったの」

 

「うわ」と、ぼくは言った。「それはびっくりするよね。よくがんばったね」

 

「ぜんぜん」と、ちいちゃん。「がんばってないよ。なんか知らない間に抜けちゃって良かった」

 

「そっか。それなら良かった」

 

「うん」

 

そしてちいちゃんは口を大きく開けて、ねえ、もう血止まってる? と聞いた。そんなちいちゃんを見て、なんだか知らないけどぼくはちいちゃんが幼稚園だったころのことを思い出した。

 

ちいちゃんが年少のころだったろうか、パン屋を辞めてからいまの仕事に戻る前に別の会社に勤めていたころぼくは肺炎になって仕事を2週間近く休んだときがあって、安静にしてなくちゃダメってことだったけど、ある程度体調が良くなるとぼくはちいちゃんの幼稚園の送り迎えを始めた。後にも先にも、ぼくがこういうことをできたのはこのときだけ。

 

幼稚園まではちいちゃんに合わせても歩いて10分もあれば着いてしまう距離で、でもそんな短い距離がぼくにはとても貴重な時間だった。

 

朝、起きて朝食を用意して、洗濯を干し、そしてちいちゃんを起こして慌ただしく朝食を食べさせ、トイレに行かせて着替えをさせて歯磨きをして。

 

あなたは仕事に行っているから楽でいいよね、とよく言われるけれどぼくからすればそんな時間こそうらやましくも思ったりする。もちろん妻が欲しい言葉はそんな言葉ではないことは重々承知しているし、面と向かってそんなことは言ったりもしない。

 

でもぼくはどうしてもそんなことを思ってしまう。それはないものねだりなのかもしれないし、毎日じゃないからそんなことが言えるんだって言われたらぼくに返す言葉はないけれど。

 

幼稚園の正門の前で先生に挨拶をして、ぼくはしゃがんでちいちゃんの背中をポンポンと2回軽くたたいて、それから「行ってらっしゃい」と声をかける。

 

ぼくがそこから玄関へ向かうちいちゃんの背中を見つめていると、まだ幼かったちいちゃんは何度も振り返りながら歩いていく。なんだかそれはうれしいような、せつないような、そんなきもちだったことをいまでもよく覚えている。

 

あのころぼくはたぶん、全力でちいちゃんを守らなくちゃって思ってた。それはいまも変わってはいないのだけれど、でもあのころのぼくはちょっと気負い過ぎていたのかもしれない。もしかしたら妻もそうだったのかもしれない。

 

いま、口を大きく開けて歯の抜けたあとをみせるちいちゃんを見て、ぼくはそんなことを思う。ぼくがどうとかじゃなくて、きみは少しずつけれどしっかりと成長しているんだね。

 

「うん」と、ぼくは大きく口を開けるちいちゃんに言った。「だいじょうぶ。しっかり血は止まってるみたいだよ」

 

***

 

まだまだぜんそくの薬を飲み続けているちいちゃん。この手の薬は症状が良くなっても飲み続けなければいけないらしくて、そんなこともあってなんとなくまだ遠出は控えているのだけど、先週は例のちいちゃんの誕生日プレゼントを買いにイオンに行った。

 

誕生日プレゼントをもらったちいちゃんはとてもうれしそう。帰ると早速、ごっこ遊びが始まった。とても、喜んでくれてありがとう。

 

HUG(はぐ)っと!プリキュア 変身タッチフォン プリハートDX
 

 

プレゼントはこんな おもちゃ。これでちいちゃんはキュアアンジュに変身。なんだか主役の子じゃなくて水色の女の子が好きみたい。ちなみにぼくはハリーという関西弁のへんな妖精役とその他大勢。そんなごっこ遊びはぼくが夕食を準備を始めるまで続いた。

 

さて、

 

ごっこ遊びの後、先週末の夕食メニューは土曜日がブリの照り焼き。妻には「またおんなじメニューじゃん」って言われちゃったけど、でもブリがね、安かったのだ。そして日曜日はちいちゃんのリクエストでグラタン。

 

市販のグラタンの素を使ったものだけど、チーズをたっぷりかけたグラタンはちいちゃんの大好きなメニュー。

 

「おいしいから食べられちゃうね」

 

なんと、

 

妻がそんなことを言ってくれた。なんかさ、そんなこと突然言われちゃうとぼくは戸惑っちゃうんだ。なんて言っていいんだか分からない。それでもやっぱりうれしかったから、「ありがとう」とぼくは小さな声で、でも多分いつもよりちょっと素直に言った。