アリス
目覚まし時計の音で目が覚めた。
うわ、やってしまった!
目覚まし時計は6時にセットされていて、それは妻の起きる時間。普段、ぼくは自分の携帯のアラームで5時には起きるから、1時間の寝坊。でも、ふと横を見ると昨日妻のふとんのなかのもぐり込んだはずのちいちゃんがいて、なんだかちょっと、というかかなりうれしくなる。いつのまにかぼくのふとんのなかに来てくれたみたい。
が、
現実的にはあんまり余裕はないわけで。けど、まあ、今日は早出の日じゃないし、妻には悪いけれどのんびりと出発させてもらおう。
ごめんなさい。
ちなみに今日も朝食はセブンイレブンで購入。またメロンパンを買ってしまった。しかも今日はホイップクリーム入り。いけないと思いつつ、惣菜パンとか買う気にはなれないのですね。なんかおかずはおかずで、ごはんと一緒の方がいいよねみたいに思ってしまって。
わけわからんって、妻には笑われちゃうんだけど。
で、
コーヒーも買って、今日はこぼさなかったのだ!
***
ぼくはみんなが言うところによると、けっこう痩せているらしい。ん、かなり? でもけっこう食べる。まあ、甘いものだけど。件のメロンパンとかもそうだし、一番好きなのはドーナッツ。しかもオールドファッション。
なものだから、普段はお昼に自分で作ったそんな多くもないお弁当を食べてるぼくが、たまに菓子パンばっかり3個も食べてたりすると、けっこう食べるんだねなんて驚かれたりする。
まあ、
驚いてるのは菓子パンばっかりってとこかもしれないけど。これはもう高校生くらいからぶれないところ。甘いのばっかり。って、なんの自慢でしょうね?
で、
組合なんかでお付き合いのある社長さんなんかには、「ろれんぞくんは、胃下垂だよね」なんて言われたりして。でも、胃下垂ってどんなことなのかよく分からないのですが。要はやせの大食いってことなのかな? だとしたらまあ当たらずとも遠からずですね。
はい。
それで昨日。
お昼に家族でマクドナルドに行って、ちいちゃんがあんまり食べなかったので残ったものをぼくが食べたのだけど、こういうことってけっこうあって、普段からちいちゃんのも食べてるんだから胃下垂にもなるよねって妻に話したら、
「いや、胃下垂ってさ。そういうことじゃないと思うよ」
って、冷静に言われてしまった。
そうなの?
さて、
そんなことはさておき最近、誕生日を迎えたちいちゃん。一昨日はスタジオアリスに写真を撮りに行きました。ハッピーバースデイと七五三を兼ねまして。
4人兄弟の末っ子だったぼくにはあんまり幼い頃の写真というものが残っていない。結婚式のときにこどもの頃の写真を映像で映し出すというので探したらほんとない。しかも母から生まれたときの写真だよって言われてもらった写真は実は兄の写真だったという始末。
いや、まあ、笑い話ですけどね。笑い話ですけど、けっこう本気で哀しかったりもするわけです。
なので、
ちいちゃんにはたくさんの写真を残してあげたいなあとなんとなく思っていて、そんなに頻繁ではないけれど、時期ごとに我が家でもスタジオアリスに写真を撮りに行っているわけです。
みんなおんなじかもしれないけど、やっぱり思っている以上に記憶というのはあやふやだから写真というのは貴重だなあとぼくなんかは思ったりして。
とはいえ、
実はぼくはスタジオアリスがとても苦手。だって待ち時間ばかりがとても長いのです。一昨日も1時半からの予約で、終わったのは5時半過ぎ。誕生日と七五三の2種類の撮影だったからというのもあるけれど、それにしても長い。ちいちゃんも疲れちゃったよね。
で、
ここでいちばん機嫌が悪くなるのがママ。「こんなに待たせるなら、最初から時間をずらしてくれればいいのに」
ぼくにいろいろ言うわけです。なので、「いや、そんなのぼくのせいじゃないじゃん」と、ぼくが言うと、「だれもパパのせいだなんて言ってないでしょ」
はい。
たしかにそんなことは言ってませんでした。
でも、そんな妻も素敵なドレス姿と着物姿のちいちゃんを見てとても素敵な笑顔を見せていて、そんなふたりを見てぼくもとてもうれしくなった。
こんな笑顔を見られるなら、ちょっとぐらい待ってもいいかな。うん。でもできるならもうちょっと待ち時間を減らしてくれたなら、我が家ももうちょっとなごやかに写真を撮りに来ることができるのですが。よろしくお願いいたします。
ちいちゃんが選んだのは花が彩られたとてもかわいいというよりきれいな白いドレス。白いドレスに包まれたちいちゃんは緊張していてなかなか笑顔が出ません。写真を撮ってくれるのは若い女性で(そういえばここは昔から男性のカメラマンっていないな)、
「笑顔がかたいよー。パパの好きな食べ物は?」
なんてことを聞いたりします。
「コーヒー」と、ちいちゃん。あ、それ飲み物だから。案の定、
「うーん、それは飲み物だなあ。食べ物は?」
するとちいちゃん、「ドーナッツ!」
大きな声で言えたけど、ドーナッツってさ、こういう場で言われるとちょっとぼくは恥ずかしい。間違ってはいないのですが。
「そっかあ、パパはドーナッツが好きなのか。かわいいパパだね。わたしも食べていい」
「ダメ!」
と、ちいちゃん。
「そっか、わたしはダメかあ」
ちいちゃんは大笑い。ひとまわり以上若い女の子にかわいいって言われてしまったぼくは苦笑い。でもさすがだな、その後はなごやかに撮影は進んで、とても素敵な笑顔の写真がいっぱい。
***
帰りは結局6時を過ぎていて、疲れちゃったちいちゃんは眠っている。遅くなっちゃったから何か食べて帰ろうか、と妻に話すと、そうだねと妻は言った。
外を見るといつのまにこんなに日がのびたのか、薄暗いなかになんとなく昼間の名残りが残っている。自動車販売店のショーウインドウのなかの電飾はなんだか淋しげに光っている。
春がくるんだな。
ぼくはそんなことをなんとなく思った。春になればちいちゃんはもう2年生。こんなふうにいつのまにか時間は過ぎていくのかな。見逃したくないなあ、とぼくは思った。ちいちゃんのたいせつなときを、ぼくは見逃していないだろうか。
とにかく、いまをたいせつに生きなくちゃな。言葉にするとありきたりだけど、多分ぼくはそんなことを思っていたんだと思う。
***
先日はちいちゃんの誕生日だったけれど、今日は妻の誕生日。プレゼントはマッサージに行かせてもらったからいいよという妻だけど、そうもいかないから、だから今日はプレゼントを買って帰るつもりだけれど。
センスの悪いぼくのこと。さて、どうなることやら。