星につたえて
妻へのクリスマスプレゼントに悩んでいる。
ぼくはあんまりセンスがいいほうではないから、ぼくが選んでしまうよりも最初から妻に聞いてちいちゃんと3人で買いに行くのがいいかなと思って聞いてみたのだけれど、
「ルンバ」
さいしょ、妻の答えはそういうことだった。
安いのもあるけどね。けど、安いのだとあんまり買う意味がない気がするし。ほんとうはそんなことないかもしれないけど、こういうのってきれいに掃除できないんじゃないかなあとかぼくは思ってしまう。
で、
そこそこのものを買おうと思えばやっぱりそれなりのお値段がするわけで。「ちょっと、考えさせてくれる」
それが、ぼくのさいしょの回答。
さて、
それで先週末、冬のボーナスが支給されて、思っていたよりもちょっといい数字だった。これはなんとかなるかもしれない。よし、今年のクリスマスにはルンバを買おう。
と。
思って家に帰ると、
「クリスマスプレゼントだけど」と、妻が言った。「素敵な洋服があったからそれをクリスマスプレゼント代わりに買わせてもらったよ」
ん、
そういうものなの?
まあ、それでいいのなら。
うれしそうにぼくとちいちゃんに見せてくれた服はたしかに似合っていて、でもお正月に実家に行くときに着ていくんだという妻に、ぼくはいろいろ我慢をさせてしまっているのかもしれないとも思ってしまう。
ルンバぐらい、
「いいよ」って即答すればよかったな。
***
そんなわけで、クリスマスプレゼントの問題は一応解決しているのだけれど、でもなんとなくちょっとしたものでもいいから手渡しできないかなあとも考えていて、でも高いものだと余計に気を使わせてしまうしで悩んでいた。
そんなとき、見つけたのが「星につたえて」という絵本。
本をプレゼントするって、下手をすると押しつけがましいだけでけっこうハードルが高いとも思うのだけれど、この絵本なら。
妻とちいちゃんに、ってことで渡せる気がする。
まだ、
生きものといえば、海のクラゲしかいなかったころ。
流れ星と、小さなクラゲの出会いから物語は始まる。
孤独だったふたりは、おたがいに宇宙の広さと海の深さについて語りあう。ふたりは、はじめて楽しい時間を知った。
ふたりははじめての友達になったのだ。
でも、やがて夜は明ける。
わかれの時がきて、ふたりは約束をした。
また会おうと。
消えゆく流れ星に、クラゲは何かを伝えたいと思う。
でも、
口をひらけば、思いと一緒になみだが溢れ出て消えてしまいそうで伝えることはできなかった。
クラゲは次に会う時、そのことばを伝えようと思った。
けれど、流れ星がふたたびこの空に現れるのははるか何百年も先のこと。小さなクラゲには、その時の流れを理解することはできなかった。
そして、小さなクラゲに寿命が訪れる。
小さなクラゲは自分のこどもに、思いを託した。
いつか、星につたえて、
と。
***
ちょっと勝手な脚色が入っちゃっているかもしれないけれどこんな物語で、小さなクラゲが伝えたかった言葉はぼくもできるなら素直に、できるだけ真面目にちいちゃんや妻に伝えたい言葉でもある。
でもね。
なかなかできないもので。
まあ、
ちいちゃんには、けっこう素直に伝えられるのだけれど。
というか、そんなにいいよって呆れられちゃうくらい伝えているかもしれない。
でもだからこそ、とくべつな夜に、こんなおくりものを届けてあげたいと思う。
ずるいかな。ずるいのかもしれないね。
でも、絵本に託して伝えるくらいがぼくのせいいっぱいだったりする。
だいすき。
そのさきもつづく思いを含めて、ぼくもちゃんと伝えられたならいいなと思う。