トトロのお父さんにはなれないけれど
ちいちゃんが生まれたときぼくが思ったことは、トトロのお父さんみたいになれたらいいなあということだった。
ん、
トトロのお父さんだとおかしいですね。
さつきちゃんとメイちゃんのお父さん。ぼくにとってはトトロのお父さん。その柔らかで暖かなまなざしとそのやさしさ、奥さんやこどもたちへの接し方、そして仕事に打ち込むときの真剣な表情がとても素敵だなと思っていた。
以来、ぼくが新年に思う一年の目標はいつも、「トトロのお父さんみたくなる」というもの。なので今年の目標も、トトロのお父さんになるだったのだけれど。
どうだったかな?
***
ぼくは子育てについて、高尚な理論や考え方というものは正直なところあまり持っていない。
ただいつも思っていることは、トトロのさつきちゃんやメイちゃんのお父さんのようであれたらいいんじゃないかなということ。だからいろいろ壁にぶつかると、
「トトロのお父さんだったらどうするだろう?」
って、自然と考えるようになった。
さつきちゃんやメイちゃんのお父さんだったなら、どうするかな? あまり強く叱ったりはしないんじゃなかろうか、ことばを尽くして伝えようとするんじゃないか、押しつけることなくただこどもたちに寄り添っているんじゃなかろうか?
たとえば、自分には見えないトトロを見たというメイちゃんを無条件に受け入れてみたように。
なんて。
そんなことを、考えたりする。
妻は、ぼくのそういう考え方に不安を覚えるようで、パパは甘すぎると言うことがよくある。妻のお父さんはたとえばデパートでわがままを言って泣き続けるこどもがいれば強く叱らなくちゃダメという考え方をするから、妻もどちらかといえばそんな考え方に近いのかもしれない。
もちろん、考え方はいろいろあっていいと思うし、それが必ずしも悪いとも思わない。強く叱る場面が必要なことがあることも分かってはいる。
でもぼくはできるなら、そういう考え方はしたくない。強いことばは反発や反抗しか生まないんじゃないかと思うから。
ぼくは甘いのかな?
そうかもしれない。
それでもやっぱりぼくはトトロのお父さんのようでありたいなあと思う。自分もかつて無邪気なこどもだったことを忘れないでいられるひと。そんなひとでぼくはありたいと願う。
しっかりと芯がぶれなければその甘さだって、しっかりとした意味を持つんじゃないかと思うから。
でも、
やっぱりぼくの考え方は甘いのかもしれない。
だとしても、ぼくはたぶんずっとそんな考え方を変えられないから、ちゃんと真面目にそんなぼくの考え方を分かってもらえるように妻にしっかり伝え続けなくちゃと思う。
もちろんそれは妻の考え方を否定するわけではないのだから。
年の瀬に。
まあ、いまさらだけど。これからもずっとということで。
***
今年、ぼくはトトロのお父さんのようであれただろうか?
トトロのお父さんみたいになりたいということをぼくはおおっぴらに言っているから、そのことはちいちゃんもよく分かっていて、
「お弁当持ってどこまで?」って、たとえばぼくがちいちゃんと公園で遊んでいるときに言うと、
「ちょっとそこまで」なんて、ちいちゃんは答えてくれる。
休みの日に、ぼくよりちいちゃんが先に起きたりすると、「パパ、起きてー」と布団の上で飛び跳ねたり。まあ、これはトトロは関係ないかもしれないけども。
嵐の夜に一緒にお風呂に入ったら、「がおー」なんて言いながらぼくは胸をばんばん叩いたり。
なんてそんなことをしているから、まあ、かたちとしてはトトロのパパみたようだけど、内実は、
なかなか難しいかなあ。
というのが正直なところ。忙しいとイライラしてたかもしれないし、妻ともケンカしたことがけっこうあったし。
ね。
だから、来年の目標も同じで、「トトロのお父さんみたくなる!」にしようかなあと思ったりしている。
なかなかトトロのお父さんみたいにはなれないけれど、いつかそんなひとになれたならいいなって、あいもかわらずそんなことを思う。
さて、
ぼくは今日が仕事納め。みなさま、よいお年を。